《Side 朱月》


どれくらいの時間、弾き続けていたのだろうか。

手を止めた俺は、太陽が赤く色付いていることに驚いた。


だいぶ前に、天音はここを出ていった。

出ていったと言っても、帰ったわけではない。

何の連絡もないところをみると、恐らくまだ教室に居るのだろう。


本当は、先に帰ってほしかった。

だから「練習したい」なんて嘘まで付いたのに、天音は「教室で歌詞を書いてる」と言ったのだ。

それ以上、俺には何も言えなかった。


何も考えないようにと熱中しすぎたらしく、考えていた以上に時間を使ってしまった。


俺はギターをケースに戻し、全開にしていた窓を閉めると、急いで部屋を出た。

鍵を返しに行かなければいけないのだが、先生に見つかると、面倒なことになりかねない。

鍵の件は、間違いなくお咎めを受けてしまうだろう。

それは困る。

今はこれ以上、余計な時間をとられたくない…。


俺は鍵をポケットに仕舞い、天音の待つ教室を目指した。