別段変わらない自室の机の上、普段は開けられていることもない引き出しに、私は動揺を隠せなかった。

開け放されたままの扉に私は向かう。急いで辺りを見回しても、ここを走り去っていっただろう愛しの子は見えない。

あの子はあれを見たのだろう。だからこそ、私の傍を離れていったのだろう。

遅かった。あの子が、見たものをどう思うか分からないが、たとえ私が公に犯罪者になっても私はあの子を恨むことはできない。それは当然のことなのだから。いや、もっといえばあの子が私を殺しにきたとしても、だ。

ああ、過ちを犯したのなら報いは当然、受けるのが道理だ。もう思考は巡らすだけ無駄と、後悔したあの時に思ったはずだ。だから、私はあの子を育てた。誤解されるかもしれないからちゃんと言えば、私は罪を犯したからあの子を育てようと思ったわけではない。もちろん、当初の予定どおり自分のためにあの子を育てていたわけでもない。これは、断言できるのだ。

ただ、私が、私以外の身寄りを失わせたのだから、当時幼かったあの子には育てる者が必要だった。だから、私はあの子をあの子のために育てたのだ。

ああ、そう思えば思うほど、自分の罪は軽くなったように思えた。でも、それは違うんだ。私はあの子を育てることで、罪さえも育てていたのだろうな。

私はあの子が戻ってきたときのために、ここに居続ける。それは、もちろん死ぬまで。

私は何もせず、機械のように生活に必要なことだけのために、行動し続ける。それは、すべてをあの子に委ねたからだ。あの子がすることに、私は一切抵抗しない。私のこれからの人生はすべて、罪の浄化に繋がるんだと信じている。

ああ、しかし、たった一言だけ、あの子に言いたいことがあったんだ。何の音沙汰もないあの子は、私のもとにもう戻ってこないかもしれない。

私はその言葉を背負って、生きるしかないのだろうか。まあ、どうせこの言葉にも、罪を洗い流したい思いしかないのかもしれないが。でも、でもだ。ただ、ただ一言だけ、

“何度も何度も、君の居場所を奪ってすまない――”