窓越しのエマ

姉さんは僕をベッドに寝かせると、キッチンで洗いものを片づけ、リビングを簡単に掃除してから、「じゃあ今日は帰るわね」と言って部屋の電気を消した。


「エゥ……」

僕は返事をした。


ベッドの端に腰かけたエマが姉さんに手を振る。


玄関のドアが閉まり、鍵をかける音が暗闇の中に響いた。

やがてエンジンのかかる音がして、姉さんの車は静かに走り去った。

窓際に立って姉さんを見送るエマの横顔が、ほのかな月明かりに白く照らされていた。


そして僕はいつものように、深い絶望感に襲われた。


無意味な一日が終わり、無意味な一日がまた始まる。

無力な僕に相応しい、無価値な人生だ。


 
きっと明日もまた、エマを連れて窓越しの海岸へ出かけるのだろう。


絵麻姉さんを奪われてしまった現実を忘れるために。



(了)