人影に目を凝らしてみてさらに驚いた。

エマだった。

目の前にある現実の窓ガラスに、空想上の恋人が映し出されている。

彼女は部屋の入り口にひっそりと立っていた。


僕は息を飲んで、ガラスの中のエマをじっと見つめた。

エマが部屋を見回しながら、僕のほうに近づいてくる。

僕は身動きひとつ取れなかった。


エマの手が僕の肩に置かれる。

僕は窓からゆっくりと目線をずらして自分の肩を見た。

小さな白い手がそこにあった。

エマが僕に微笑みかけている。

彼女の小さな息遣いは僕の耳朶を震わせ、肩に置かれた手からは血の通った温もりが伝わってくる。

確かに、僕のエマがそこにいた。