度肝を抜かれた。

僕は黒いピストルを持っていた。

弾倉が回転式になっている何だか古臭い拳銃だった。


「またそんなもの出して」


エマは半ばあきれ顔で、僕をからかうように笑った。


つられて僕も苦笑してしまう。

あまりにも突飛なものを手にしていたせいで、毒気を抜かれてしまった。

僕がこんなものを持ち歩いているわけがない。

思いがけず、乾いた笑い声が漏れた。


「エマがおかしなことばかり言うからだよ」


僕は海に向かってピストルをほうり投げた。

当然、海まで届くはずもなく、ピストルは五メートルほど先の林藪の中に落ちていった。


「じゃあ、そろそろ帰ろうよ」

と言って、エマが公園の出口に向かう。


性懲りもなく、エマはまだあんなことを言っている。

一体どこに帰るというのだろう。


エマ、君には帰るところなんてないんだよ。


だって君は、僕の創り出した虚像に過ぎないんだから。