「や、だから。アルバム作ろうと言ってたときくらいからライヴハウス押さえ始めたんだよね。初のワンマンツアー」

いえーい、とやはり一人で勝手にも盛り上がるイッペーさんに唖然。
というか、8月って。

「1ヵ月じゃん、って、え? 全然練習してねぇよ」

さっきまでアルコールに支配されていた頭が急速に冷静さを取り戻し、皆そわそわとしだす。
うそじゃないと分かると、すぐさまライヴツワーの話に切り替わる。
何公演すんの? セトリは? 客は? 期間は?
こうなるともう、あたしの出番はなくなってしまう。

小さい机を囲んでいた5人から、あたしが抜ける。出窓側にくっつけられたベッドに座って、真っ暗闇の外を眺めた。
雲が一つも無いすこし欠けた月が見える。

勝手に膨らんでいった想いに、どうしようもなくなった。
アルバム製作も落ち着き、夏休みにもなる。

頑張るなら、今かもしれないって。

思ってたのになぁ。