しばらく重たい空気が流れた。そして、そんな空気を壊したのも、恭平だった。


「陸ケータイ持ってる?」


『あるけど、ポンチョん中。』


「なんでポンチョに入れてんだよ」


『ん?ズボンに入れとくとびっくりするから。』


「フフッ、俺お前より早く入ったけど、授業中ケータイ鳴ってんの見た事ないぞ?」


急用とかで呼び出しが掛かると、学校じゃなく自分の携帯に掛かってくるからバイブ設定にしとけ。
教室まで行く途中、新垣先生にそんな事も言われてた。
やっぱ変わった学校だよな。ケータイない奴はどうすんだろ?
恭平とアドレスを交換すると、智章さんの分まで送られてきた。


「俺になんかあったら、陸がちーちゃんに連絡出来んだろ?だから、高城ちゃんのアドも送って!」


『あ…知らない。』


「えっ、なんで?」


『……直接聞いてこい。』


理由を話さない俺に、恭平は何か言いたそうに口を開いたあと、結局何も言わずに葵の元へ行った。


「─あなたと恭平さんはよく似ていらっしゃいます。」


いきなりそんな事を言われ、顔を上げると、銀のトレイにホットコーヒーを乗せた智章さんが立っていた。


「どうぞ。」


『あ、ありがとうございます。』


テーブルにコーヒーとミルク、シュガーポットを置き、微笑する智章さんにさっき言われた事を聞いてみた。