僕の執事

親父の後ろに、黒いスーツを着た男の人が居て、親父が来たのより気になってた。
あの時着てた少し丈の長い上着やシワ一つないシャツにパンツ。
きっとあれが執事の正装なんだろうな。


「今日からお前に執事を付ける。
身の回りの世話も騎馬がしてくれるから、お前はお前でやりたい事をしなさい。」


兄の直樹には少し緩めの英才教育をしていたのは知ってた。
大変だなぁっていつも遠目に見ながら、心のどこかで羨ましがってた。
きっとそんな俺を可哀想とでも思ったんだろう。


母さんは、兄貴に付きっきりだったし…。
だから、夜も寂しくないようにって騎馬を付けたんだろう。
あれから毎日、俺の側にはいつも騎馬がいた。
葵のままごとに付き合わされたときも、公園で転んだ時も、運動会や、遠足にまで…
執事の正装燕尾服も俺が高学年になったとき変えた。


きっかけは、俺が買い物に出かけた時だった。
街を歩いてる時の、周りが俺を見る視線が気になった。
でも、実際は、俺じゃなくて、後ろにいた騎馬にむけられた視線だったんだけど。
その時、立ち寄った行き着けのショップで燕尾服から私服に変えた。