僕の執事

─────…

『ただいま』


昨日の賑わいが嘘みたいに静かだった。
この家、こんなに広かったっけ?てか、こんなに静かだったかな?
真っ暗な廊下を階段に向かって歩いた。
母さんも親父も兄貴も仕事で忙しいのか。


あ、そっか。
俺ずっと騎馬と一緒だったから、この静けさに気づかなかったんだ…
トンッ トンッ トンッ──階段をゆっくり上がる足音が誰もいない家に響く。
まるでお化け屋敷だな。
なんて突っ込んでみたけど、笑えなかった。


自分の部屋へと続く廊下を歩く途中、執事部屋の前で足が止まった。
 騎馬の部屋はまだ残ってるけど、帰った気配すらない。
一番奥に兄貴の部屋があって、俺の部屋は少し離れ隣にある。
その隣に騎馬の部屋が、そして、その隣には葵の部屋がある。


俺は今、葵の部屋の前でドアノブに手をかけたまま、動けずにいる。
騎馬がいた時は、勝手に入ってだけど、今は勝手が違う。
いきなり入ってモノを投げられる心配は無いとしても、悲鳴が聞こえそうだな。
 ノックをしようかとも思ったけど、それはそれで困る。


『はあ…』