僕の執事

騎馬は軽い笑みをこぼし、俺の話を聞いてた。


『騎馬とこうやって話すのも今日で最後か…』


ソファーに寄りかかり、天井を仰いだ。


「そうですね。」


『騎馬とはいろんな事したなぁ』


「殆どが陸の"むちゃぶり"や"思いつき"でしたから、大変でした」


シミジミ語る騎馬に、思わず吹き出した。


『そういや最初に逢ったのもこんな感じだったよな。親父が突然現れて、今日から騎馬がお前の執事だって。』


「そうですね。」


騎馬は何かを思い出したようにクスっと笑い「あの時は」と話し出した。


「あの時は確か、陸が小学校低学年の時でしたからね。
執事が何かも分からず、僕をジーッと見て『あんた誰?』なんて言ってたあの陸がこんな大きくなるなんて…」


『俺そんな事言ったか?』


「はい!! 僕、その時はまだ十代だったので、ショックでした…。
そのショックも陸の可愛さで消えましたが」


ニコニコしてる騎馬に苦笑いしか出なかった。
─俺と騎馬と逢ったのは確か10数年前のある日。
いつものように少し広い庭で葵と遊んでいた時、めったに家に帰らない親父が現れて、「元気か?」なんて笑いながら頭を撫でられたのを覚えてる。