キュッ─


『はあ…』


蛇口をひねり、顔を上げるとポタポタと水滴が落ちた。
ひでー顔。
なんでそんな暗い顔してんだよ。
自分に自問しながら、あらかじめ出して置いたタオルで顔を拭いた。
髪もボサボサで俺どんな寝かたしてたんだよ…
 手グシでさっと整え、前髪をまとめクリップで留めると、歯ブラシを口に突っ込みリビングへと向かった。


「おはようございます。」


『ん? おはよう』


リビングに向かうと、珍しく兄貴が新聞を広げてた。
その少し後ろには、スーツのようにも見える燕尾服を着た騎馬がいた。
俺のプレゼントしたネクタイもちゃんと締めてる。


『結構似合ってんじゃん!』


モゴモゴと喋る俺に、
「ちゃんと歯磨き終わってから来いよ。」と新聞を折り畳む兄貴に言われた。


『は~い。』


「…騎馬、コーヒーおかわりくれるか?」


「かしこまりました。」


ペコリと頭を下げ、コーヒーカップを下げる騎馬と兄貴をソファーに寄りかかり珍しいものを見るような顔で眺めてた。


『兄貴、騎馬に気使ってる?』


「なんで?」


『なんか、話し方が変…ん』


それだけ残し、洗面所に走った。