『クソッ!』


何度足掻いても動かない足に苛立ちながら、離れてく葵の姿が小さくなるのを、黙って見ていることしか出来なかった。


『葵!!─…っ…ハッ!!』


またこの夢か…
飛び起きたベッドの上で、俺は葵の名前を呟いた。


「なんでしょう?」


何気なく呟いた名前に、返事と共に近づいてくる葵を横目に見てた。
あの日と変わらぬ声で喋る葵の姿は、あの日とは違う。
うなされてたか?なんて、聞かなくてもわかる。
今日はこれで二度目だ…


『なんでもない。』


そう呟き、頭から布団を被った。
キツくつぶった目から、涙が出たのを汗のせいにし、背中に葵の気配を感じながら、眠った。