僕の執事

すっかり陽が落ち群青色になった夜空にハア─と白い息を吐き、ホームに降り立った。


「大丈夫ですか?」


『うん。』


二時間振りに聞いた声は、どこか不安げだった。
 ゆっくり一歩を踏み出すと、後ろからカツッカツッと騎馬が履いてる革靴の音が付いてきた。


『騎馬、もしかしたら また、お前に俺の執事に戻って貰うかもしんない。』


「え…?」


『もしそうなったら、そんときはよろしくな。』


ポケットに両手を突っ込み、制服のポンチョを風になびかせながら明るい声で言った。
今の俺に、迷いはなかった。だって、アイツが執事であろうとなかろうと、始めから関係なかったんだ。
俺が好きなのは、高城葵っていう1人の女の子なんだから。
 その事実にもっと早く気づくべきだった。
そうしたら、誰も傷つけずに済んだのかな?ってちょっと良いように解釈しすぎだな。


 ──早まる足は真っ直ぐ執事学校に向かっていた。
相変わらずデカい門が暗闇の中では不気味な程似合ってた。
校内にはまだ生徒がいるらしく、微かに光が漏れてた。
ギィ…─騎馬が開けた門の音が、静寂を破った。


「不気味な音ですね」


その呟きに、苦笑し後に続いた。