僕の執事

 車が駐車場に停車し、顔を上げると─


『駅?』


訳も分からず開けられたドアから、傘を差す騎馬がニッコリ笑った。


『どこまで行くの?』


「追々話します。
とりあえず、まもなく電車が到着するのでいきましょうか?」


『ああ…』


いつの間にかみぞれに変わった空を見上げ、到着した電車に乗った。
俺たちが乗った電車は上りなのもあってか人がまばらだった。
 ドアのすぐそばに腰掛けた俺の隣に、珍しく騎馬も座った。
騎馬の服装にも大分慣れたな…。
兄貴に仕えてからずっと執事服だったしな。
葵も着てたし…。


──発車ベルに合わせドアが閉まると、ゆっくり走り始めた。
真っ暗な窓には、向かい側に座る俺と騎馬の姿がぼんやり映ってた。
 葵と一緒に出掛けたときにも、映ってたっけ…
帰りの電車の中、俺の肩に寄りかかって寝てた葵の寝顔、可愛かったな。


「陸マリアさんという方ご存知ですよね?」


思い出の中を漂ってると、唐突そんな事を聞かれ思い出すのに少し掛かった。


『あぁ、うん…なんで?』


ドキドキしながら、先を促した。