意識が無くなる直前、2人が俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。
叫びにも似たその声は、今はもう聞こえなくて…
 ──俺は夢を見てた。
真っ暗なトンネルの中を、出口を探して歩いてる夢。
誰も居なくて、呼びかけても返事なんか返ってこなくて…


『葵…』


一瞬だけ目を覚ました俺は、自分の部屋のベッドに寝てた。
ゆっくり左に目を向けると、そばで眠る葵がいた。


『あお…』


最後まで名前を呼ぶ前に、闇の中に吸い込まれるように眠りに落ちた。
ひたすら闇の中を走り、一瞬眩しい光が俺を包み、光が淡いオレンジに変わった気がして目を開けた。


「ちぃちゃん、またね!」


俺の目の前で、葵が笑顔で手を振ってた。
俺も何か言ったらしいけど、自分の声が聞こえない。


「もう、ここでいいよ?」


俺は届いてるか分からない状態で、葵に話しかけた。
それは、俺が一番葵に伝えたかったこと。
─俺お前に伝えたい事があるんだ。
あの時、考えずに素直に言えばよかった。


「バイバイ。」


好きだよ。
ずっとずっと好きだった────