カッコ悪い姿なんて散々見られてきたはずなのに、ヤッパ弱い姿は見られたくない…
俺の後をついて来る葵が、キッチンに入ったのを確認すると、遅れて騎馬もリビングに来た。
 葵から死角になるようキッチンに背を向け立つと、小さな声で会話をした。


「コートはクリーニングに出しておきます。」


『ん、悪いな。』


「本当にお食べになるんですか?」


眉をひそめ言った騎馬に、なにも言わず頷いた。


『だって、ずっと俺の帰り待ってたんだせ?
言えるかよ…本当のことなんか。』


俯いた俺に、騎馬は何も言わず葵が居るキッチンへと向かった───


『いただきます。』


「「いただきます。」」


テーブルに並べられた料理を、2人の執事と一緒に食べた。
3人で食べるのは、俺が風邪引いた時以来2回目になる。


『変な景色』


俺の左に騎馬が、前には葵がいる。
その光景に小さく笑いながらそう言うったら、2人の執事が同時に俺を見た。


「陸大丈夫ですか?」


心配そうに聞いてくる騎馬に、『何が?』そう返したつもりだった。
 急に激しいめまいと、寒気に襲われ、さっきからぼやけてた葵が突然消えた。
いや、消えたんじゃない…俺が目を閉じたんだ。