深々と頭を下げる騎馬を見て、いい執事を持ったな。と帰り際小声で言われた。


『はい、ありがとうございます。』


素直に返事をし、過保護過ぎる騎馬に無理やり車椅子に乗せられ、そのまま秋山先生と別れた。


『打撲だけだったな。』


「奇跡ですね。」


『どういう意味だよ。』


「普通、あんなに痣だらけになるまで殴り蹴りされていたら、骨折まではいかないにしろ、骨にヒビが入っていてもおかしくないですから。」


『…確かに、途中で気失ってたみたいだし。』


少し騒がしいロビーを抜け、会計を済ませると病院を後にした。


『─葵になんて言おう…』


後部座席に座り、小さくため息を吐くと、運転席から正直に話せばいいのにと声がした。


『それは…』


「出来ないのは知ってます。僕から適当に言い訳をしておくので、今日と明日は安静にしていてください。」


『うん。』


心配性過ぎる騎馬にそう返事をし、窓の外に見える景色を言い訳を考えながら眺めた。