僕の執事

葵はずっと「ちぃちゃんのバカ」って呟いてた。
恥ずかしげもなく素直にそう言える葵が羨ましかった。
泣きたいのを我慢してる俺の身にもなれ。
そう言おうと思ったけど、離れないよう手を握る事だけで精一杯だった。


家に送り届けた後も、葵は何か呟いてた。
聞き取れなかったけど。
あの頃の俺は、子供(ガキ)だったから、葵の抱えてるものにすら気づいてなかったし、気づけなかった。
今もそれがなんなのかわかんないけど…


その後、俺は騎馬に抱きつき思いっ切り泣いた。
騎馬の前では強がらずにいられた。
なにも言わずにずっと背中をさすり、時折「よく頑張りましたね」そう言った騎馬に俺が言った言葉が「騎馬は友達であり、親友であり、親であり、家族だな…」だった。


今でも思う。
これからも、この先もずっと友達であり、親友であり、親であり、家族。
兄貴に付いたからってそれがすべて崩れるわけじゃない。


『騎馬、お互いがんばろうな。』


「はい。」


騎馬とそんなやりとりをし、ゲーセンに入った。
そして騎馬が言う。


「僕は何も致しませんから。」


分かりましたか?と後付けし、俺を見る騎馬の腕をいきなり掴むと、なにも言わずプリクラ機の中に入った。