『お前、知ってたの?』


騎馬は戸惑いもせず「はい」と言った。


『…寂しい、とかない?』


少し目線を落とし、騎馬に聞いたが答えはなかった。


『…まあ、会おうと思えば会えるしな!』


明るく言う俺に、後ろに立つ騎馬はまた返事をしない。


『…なんか言えよ!!』


騎馬に文句を言ってやろうと振り向くと、騎馬は少し寂しそうな顔で微笑んでいた。
ズルくね?そんな顔…。


「陸、今日までお世話になりました。」


『…それ、俺のセリフ。』


「ふふ、そうでしたか。」


『うん…あ、今までありがと。迷惑ばっかかけて悪かったな。 服も…』


そっか。
兄貴の所に行ったら、執事の正装ってやつに変わっちまうのか…
そしたら、騎馬だって見分けらんねぇかもな。
薄ら笑いを浮かべる俺に、騎馬は「いえ、楽しかったです。 めったに出来ない体験ばかりでしたから。」そう言って笑った。


『…新しい執事、っていつ来んの?』


「今夜には着く予定です。」


『今夜?!』


「はい。昨日、執事学校を卒業したばかりなので。とても優秀な方ですよ?きっと陸も…時間は掛かりますが、すぐなれるでしょう」