「お帰りなさいませ。」


久しぶりに見る笑顔に、少し涙腺が緩んだ。


『騎馬、久しぶりじゃん!! 帰ってたんだ。』


「はい、今日は早くに上がったので。
…直樹さんはもうお休みになられましたが」


『あ~…起こさなくていいから。』


「はい。」


玄関でしばらく話した後、リビングに移動した。
騎馬の話し方が変わった事には、喋ってすぐに気がついた。
会社で何してんのか知んないけど、初めて"執事"だって思った。


「何かお飲みになられますか?」


『じゃあ、ホットコーヒー』


「葵さんは?」


「あ、私は大丈夫です。」


「そうですか。」


それだけ言うと、キッチンに消えてった。
 コートを脱ぎドサッとソファーに倒れるように座ると、キッチンの方から微かにコーヒーの薫りが漂ってきた。


『騎馬ぁ』


俺の呼びかけに、キッチンから返事が来た。


『お前、兄貴の会社で毎日何してんの?』


「どうなさったんですかいきなり。」


『んー? どうもしないけど、ちょっと気になったて。前に暇だって言ってたから、今もそうなのかなあって』