─みんなの所に戻る途中、首に巻いてたマフラーを葵に渡した。


「…これ…」


『ずっと外にいたから寒いだろ? ちゃんとしろよ?風邪引かれると困るから。』


「でも…」


まだ何か言おうとする言葉を遮り、『無くすなよ!!』とだけ言い先を歩いた。


「かしこまりました。」


やっと素直に聞き入れた葵と共に、車に戻ると、恭平が足踏みをして待ってた。


「おせーよ!!」


『だったら、先に乗ってろよ』


「そうだけど…」


少しいじける恭平の背中を押し、車に乗せ、葵が乗ったのを確認してから最後に乗り込んだ。


「全員いる?」


助手席に座る泉が後ろを振り返り、人数確認するのに便乗して、後ろに葵がいるかを確認した。
マフラーで口を抑え笑う姿に、一瞬何してんのか分かんなかった。
人数確認が終わり、座席に座り直した時、その行動の意味を理解した。


『あ…(なるほど!)』


俺も、無意識に同じ事してたんだろうな。
マフラーに染み付いた、香水の匂い。葵から取り上げた時も微かに香った。
それだけで、幸せな気持ちがした。でも、葵からしたら《陸の匂いがする!》程度なんだろうな。