僕の執事

─泉から大分遅れて丘に着いた。
さっきから冷たい空気を吸い込む度、鼻が痛くなる。
そんなのお構い無しに、着々と準備を進める南は、本当に精神的に強い執事だと今更になって思った。
それをコッソリ恭平に耳打ちすると、「確かに」って笑った。


「泉と付き合い長いから、慣れてんだろうな。」


『なんか、騎馬が恋しくなってきた』


「高城ちゃんじゃ不満なの?」


『いや、不満じゃないけど、頼みづらいんだよね…元幼なじみとは言え、昔から仕えてるわけじゃないしさ。』


「そっか、執事が変わると大変なんだな。」


『ははっ。時々恭平が羨ましくなんだよね』


「俺が?」


『うん…─』


泉と南がせっせと準備するのを横に見ながら、話を続けた。


『恭平が智章さんとじゃれてるの見る度、騎馬にだったら…って頭のどっかで考えててさ。
いくら執事だとはいえ、葵じゃ冗談も言いづらいし…そのせいなのか、なんか最近この辺がモヤモヤすんだよね。』


胸の辺りをさすり、ため息を吐いた。


「…陸はズルいよ。」


『ズルい?』


「うん。好きな人と365日24時間一緒に居れんのに、前の執事が良かったなんて。贅沢だ」