僕の執事

確かに母さんは兄貴に付きっきりだった。
俺はいつも羨ましげにその光景を影から見てた。
騎馬が来た後は、そんな姿にすら何も感じなくなっていた。
兄貴には母さんがいるけど、俺には騎馬がいるんだ。執事だぞ!凄いだろ!!そう心の中で叫んでたのを思い出しす。


『騎馬、ありがとな。
いつも側にいてくれて。』


「いえ、それが僕の役目ですから。
陸は僕の大切な主です。」


『うん。』


「友達であり、親友であり、親であり、家族ですもんね?」


『なんだそれ』


「陸が言っていたんですよ?」


『俺が?いつ?』


「いつでしたかね?
確か…葵さんとケンカした日です。
暗い顔で帰ってきた陸が、僕にいきなり抱きついてきたんですよ?覚えて無いないんですか?」


『…覚えてるよ。』


忘れるはずない。
確かあの時、葵が「私が居なくなったらどうする?」って聞いてきたのがキッカケでケンカになったんだ…──


今思い返せば、兆候があったんだよな…。
ちゃんと話し聞いてやればよかったのに、あん時の俺は本気にしなかった。


だから言ったんだ
『葵が居なくなってもなんも変わんねえよ!』って。もちろん冗談のつもりで。
でも、葵は笑ってくれなかった。


「ちぃちゃんは、私が居なくなっても平気なんだね。」