「なのに、だんだん気づいて欲しくてさ、振り向かせたくて意味なく頑張って見たりして?
態度や言動で示しても、冗談に取られたりしてさ…苦しいよな。」


『…うん…』


俺はお前の言葉聞いてる方が苦しいよ…。
ごめんな。
切ない横顔に心の中で静かに謝った。


「爆発しそうなの?」


少し間が開き、さっきよりも明るい声で聞いてきた。


『少し。』


「そっか…。
伝わるといいな、陸の思い。」


『…うん…』


それ以外言葉が出なかった。
執事学校に行った事、そこで葵を好きな神田に会った事。
理事長の事を話そうかとも思ったけど、結局言えぬままその話は終わった。


正確には、恭平がその話をしたがらなかった。
だから俺も話すのを止めた。
 妙な空気と沈黙が俺と恭平を包む中、泉が口を開いた。


「もう少しで着くぞ?」


前を見たまま、声を発した泉はチラッとコッチを見ると薄ら笑いを浮かべた。
──1時間近く走る車は、いつぞや来たあの丘の坂を上り始めてた。


『前と同じ場所?』


「ここが一番キレイに見えるんだ。
街頭も電線もないこの丘が、天体観測にピッタリの場所なんだよ。」