魔法が解けたシンデレラは、王子様に見つけだされてハッピーエンドになったけど、俺の場合、ハッピーエンドなんかない気がする。
 電車で撮った写真を見つめ、小さくため息をついた。
こんなに近くにいるのに、恋人になれないなんだから。


『はぁ…ムカつく。』


自分で自分に苛立ち、頭を抱え俯いてると、暗闇の向こうから葵の声がした。


「…陸?」


『ん―?』


「準備できました。」


その言葉を聞き、閉じたケータイをポケットに入れ無言で立ち上がった。


『…─忘れ物は?』


葵の近くに来たとき、横をすり抜けながら、そう問いかけた。


「大丈夫です。
あの、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」


少し戸惑いそう答えた葵からは、微かに香水の残り香がした。