僕の執事


「明日から高城葵が正式なお前の執事になる。
それまでは騎馬がお前の執事だ。
今のうちに、やりたいことしなければならない事を済ませておけ。」


『…はい。』


もっとめちゃくちゃな事を言われるんだと思って構えてたら、まともな事を言われ拍子抜けしたまま、騎馬が開けたドアを通り自室へ続く階段を上がった。
後ろには、騎馬が穏やかな表情で俺を見てた。


『…騎馬─』


「葵さんならお父様とお話しておられますよ?」


『そう…、お前知ってたのか?』


「葵さんの事ですか?」


『あぁ。』


「はい、来る2.3日前には知らされましたので。陸の執事を下りる事は前々から何となく知らされてはいましたが…」


『そっか。』


「黙っていて、ごめんなさい─」


少し長い廊下を歩き、ドアを開け『はぁ』と息を吐いた。


『なんか、疲れた…』


そのままソファーに倒れ込み、天井を見つめた。
騎馬は相変わらず、突っ立ったままで、俺の視界の端に映り込んでた。


『…なあ、座れば?』


「いえ、僕は此処で。」


『そう。』


騎馬の返事を聞きながら、親父に言われた事を思い出してた。
《今のうちに、やりたい事しなければならない事を済ませておけ》か。
騎馬とやりたいこと…
最後の思い出か。


『…よし、決めた!!』


ソファーに預けてた体を勢いよいよく起こし、立ち上がるとコートを掴んだ。