僕の執事

大きな道を真っ直ぐ歩いてると、所々に脇道があるのを見つけた。
車一台がギリギリ入れる幅の道が、木々に覆われた一本道の中に隠されてた。
不思議な所だな…。
俺は葵が話してくれる思い出話を、黙って聞いてた。
それは、俺の居ないそして、知らない葵の思い出。


「明るいうちにこの道をちゃんと見れるなんて、思ってなかったなぁ…」


カツッ カツッとブーツの音を響かせ、当たりをゆっくり見渡す葵の後ろ姿を、複雑な気分で見てた。
はじめて見る景色に戸惑ったのは確かで、自分で賛成したのに、少し後悔し始めてた。


「執事学校に入ってからしばらく、泣いてたんです。夜が来るのが怖かった…何度も陸に電話しようとして、結局掛けられずに泣きつかれて寝ちゃって。そのたび強くならなきゃって…」


『葵…─』


「陸にかけたら帰りたくなるから、電話出来なかったんです。」


小さく呟く声が頭に響いた。


「り、く?」


気づいたら、葵の事後ろから抱きしめてた。
胸がすげー苦しくて、痛くて…なんか知んないけど俺泣いてた。


『落ち着くまで、このままでいさせて…』


泣き顔見られたくなくて、葵の匂いに包まれながら、静かに泣いた。
みっともないって言われればそれまでだけど、涙が止まんねえ…