僕の執事

ゾウが係員に餌をもらってる姿を黙って見てると、葵の言った通り、真っ赤なリンゴを鼻でつかみ器用に口に運ぶゾウ。
 その瞬間、ふと隣が気になって顔を向けると、子供みたいな顔でジッとゾウを眺めてた。
そんな葵から目が離せなくて、離したくなくて、気がついてくれるまで見てようか…なんて思ったけど、おかしくなって止めた。


「陸、もう一カ所行きたい場所があるんですけど…」


ゾウの食事が終わった頃、言いづらそうに俯きながらそう言われた。


『どこ?』


「少し遠いんですけど…」


『うん…─』


少し戸惑う葵に行き先を告げられ、正直驚いたけど、行ってみたいとも思った。
どうしてあの場所を選んだのか、俺には分からないけど"行きたい"の方が勝ってた。
動物園を出て、バスに乗り駅の近くで降りると、近くのマックで昼食を取り再び電車に乗った。
 目的地まで一時間ちょっと。まばらな車内に葵の声が静かに響いた。


「ワガママ言ってごめんなさい。」


『別にいいよ。
ワガママだって思ったことねぇし。』


「え…?」


『昔は平然とワガママ言って、さんっざん俺の事困らせてたくせに。
なんで俺が黙って、お前に付き合ってるか分かる?』


葵は黙って首を横に振った。