僕の執事

それから1時間ほど電車に揺られ、目的地の駅で降りた。
そこからバスに乗って、動物園に来た。
その間も、俺は葵と言葉を交わしてない。


『─すごっ…』


1時間ぶりに発した声が予想以上に大きくて、少し驚いた。
ゲートを潜り、園内を見渡すとやっぱり親子が多かった。
売店はクリスマス色に飾り付けられ、サンタ帽をかぶった係員数人とすれ違った。
その光景に苦笑し先を進むと、子供に囲まれたサンタクロースに「メリークリスマス!!」と風船を差し出された。


『あ、どうも』


差し出された風船に戸惑い、視線を下に向けると子供と目が合った。


『…もらってくれるか?』


「もらってあげる!」


男の子の目線までしゃがむと、風船を手渡した。


『ありがとう、離すなよ?』


嬉しそうに走って行く男の子の後ろ姿を眺めてると、男の子の両親と目が合い頭を下げられた。
それにつられて、立ち上がった俺も軽く頭を下げた。


「かわいい子ですね?」


不意に聞こえた言葉に隣を見ると、笑顔の葵がMerry Christmasと印刷されたピンクの風船を持ち、嬉しそうにはしゃぐ男の子を見てた。


『やっと元に戻った。』