僕の執事


「一ノ瀬くん?」


いきなり名前を呼ばれ、声がした方に顔を向けると、前から名波が執事を連れ歩いてた来た。
名波の姿を見た葵は、繋いだ手を離そうとした。
なんで隠そうとするのか、理由は分かってた。
だから余計に離したくなくて、繋いだ手を後ろに回した。


『買い物?』


「うん!」


紙袋を持つ執事を見て訊ねると、笑顔でそう答えた。


「そっちは? 買い物、には見えないね。」


薄ら笑いを浮かべ、俺の隣に目を向ける名波に、葵は軽く頭を下げた。
そして、あの日と同じように俺に何も喋らせなかった。


「あ、デート?
彼女いたんならあの時言ってくれれば良かったのに。そうしたら、私告白なんかしなかったのに!!」


無理に笑顔を作る名波に胸が痛んだ。
そして、隣にいる葵がどんな気持ちで名波の言葉を聞いてるのかがすごい気になった。


『デート…てか、まだ彼女じゃ…─』


「って事は、いずれそうなるって事?」


『えっ?』


名波の言葉にうまく返す事ができず、目線を漂わせ言葉を探した。


「あ、デートの邪魔しちゃ悪いから、そろそろ行くね?」


『ああ…』


「じゃあ、学校で。
ごきげんよう…」


『…ん…』