朝食を済ませ、葵を呼びにリビングを出た。
一応コートとマフラーを着て。


『ふぅー…』


大きく深呼吸し、葵の部屋をノックすると、返事の後にドアが開いた。
ドキドキ高鳴る鼓動を抑え、床に落とした視線をゆっくり上げた。


『……!!』


言葉が出なかった。
目の前にいる葵は、上下黒の燕尾服から、薄いピンクのワンピースに変わってた。中には白い七分袖の服を着て、ハニカム葵から目が離せなかった。
俺が知らない間に、葵は綺麗になった。
俺じゃなくても…
言葉の先をかみ殺し、考えないようにした。
なのに、理由もわからず悲しくなった。


「…陸?」


『ん!?』


我に返ると、葵が心配そうに俺の顔を覗き込んでた。


「どうかなさいました?」


『あ いや、なんか別人みたいだなぁって。』


笑みを作り、葵に向けた。


「変じゃないですか?」


『全然!!』


「久しぶりに燕尾服以外の服を着ると、やっぱり変な感じがしますね。」


そう言ってスカートをヒラつかせる葵を、コートのポケットに両手を突っ込み眺めた。


『そう? 俺はこっちの方が好きだけど。』