僕の執事

『はあ…』


白い息が、空に消えた。
行く宛てなんかないし
友達っていう友達もいない。
歩き出した俺の足は、葵の家の前で止まった。
それほど大きくはない俺と葵の家。
俺と葵のお母さんが親友で、昔約束したらしい。

 「何があっても、家は隣同士ね!」と「あまり大きいと目立つから、同じ高さにしない?」
遠い昔にしたその約束が果たされ、そのおかげで俺は葵に会うことができた。
いつも隣にいて いつも笑ってて、側にいて当たり前の存在だった。
葵はどう思ってたか知らないけど、俺はそんな葵に恋をしていた。


告白もしないまま時間だけが過ぎた。
それでも、俺は気にも止めなかった。
ずっと隣に居ると思ってたから。中学の卒業式が間近に迫る時まで…
葵の使っていた部屋の窓を見つめた後、また歩き始める。


『幸せって続かないもんだよな。』


ポケットに入れた手が、何かに触れた。
取り出すと、騎馬のアドレスだった。


『…いつの間に…一応メールしとくか。』


カチカチとボタンを操作し、一字一句間違わぬよう確認しながらアドレスを打ち込んだ。


【落ち着いた頃帰るから
陸】


それだけを打ちこみ、送信した。