僕の執事

それから、また少しの間沈黙が続いた。
もう少しで騎馬が居なくなるっていうのに、いざとなると何を話せばいいのか分からなくなる。
でも、この距離が俺と騎馬には【普通】の事なんだよな。


「そろそろですね。」


騎馬がそう言った時、ちょうどチャイムが鳴った。


『ピッタリ…』


「執事に狂いはありません。」


少し誇らしそうな顔で立つ騎馬を見て、思わず笑ってしまった。


「迎えに行って参りますので、ここで待っていてください。」


『おう。』


新しい執事なんか、いらないのに。
パタン─と閉まるドアを見つめ、葵の事を思い出していた。
毎日のように夢に出てきた葵。
いつも別れる夢。
そして、いつも夕暮れ。
でも、葵が俺の前から居なくなったのは、ハッキリとは分からない。
朝だったのか 夜だったのか…


でも、そんな事はどうでもいい。
そんな事は関係なくて、元気…なのかな？
　前を見つめたままソファーに倒れた。
斜めに映るドアの向こうは、いつにも増して静かだった。
─微かに誰かの足音が聞こえたる。
めんどくせえ…。
そのまま仰向けに倒れ、おでこに腕を乗せ目を閉じた。