丁寧に指し示す方へ目線を向けると、両手に一つずつ飲み物を持ち、たどたどしく歩く2人の執事が視界に入った。
 俺は無言で立ち上がると、葵の元に駆け寄った。


『─俺のどっち?』


「あ、こっち…」


差し出された方を受け取り、手ぶらになった葵の左手をなんの迷いもなく握った。
葵はビックリしてたけど、振りほどこうとはしなかった。


『おせーよ。』


「ごめんなさい。」


『心配したんだそ…』


不器用なりに一生懸命言葉にした。
一度も振り向く事なく、ただ一方的に引っ張る俺の手に、ぎゅっと力が入った。
握り返して来た葵に、手のひら越しに"ごめん"て言われた気がして、言葉の代わりに倍の力でぎゅっと握りかえした。


『─あまっ…』


その後、座り直した芝生の上でまだ温かいコーヒーを飲んだ。


「陸はホワイト チョコレート モカであってましたよね?」


不安そうな顔で確認してくる葵に、『あってる…』と伝えると、その表情が笑顔に変わった。


「陸って甘党?」


俺と葵の会話を聞いてた恭平が、そんな質問をしてきた。
前にもされた気がする…思い出せないけど。


『んーどうだろ?
甘いのは嫌いじゃないけど。』