それでも心配なのか、葵は俺に近づくと、おでこに手を当てた。


「─…大丈夫そうですね。
でも、あまり長居はしないで下さいね?
朝は冷えますから。」


『…母さんみたい』


ニッコリ笑う葵に、ぼそりと呟くと、その場を後にした。




────…

風呂から上がり部屋に戻る前に、リビングを覗くと、騎馬と兄貴がいた。
ちょうど朝食の時間らしい。


「お、陸。風邪はもういいのか?」


俺を見つけた兄貴が手招きする。


『ん、もう大丈夫。』


ダイニングテーブルの椅子に腰掛け、朝食を食べる兄貴に訊ねた。


『それよか、なんで騎馬よこしたの?』


「別に理由は無いけど、騎馬が暇そうだったから。」


『騎馬って、そんなにやることないの?』


「ああ、親父と行動する事が多いから、大半は秘書が全部やってくれんだよ。
だから、騎馬にはあんまり仕事がなくて」


『…そう。親父の考えがさっぱりわかんねぇ。』


「俺も。ごちそう様。
騎馬、コーヒーもらえるか?」


「かしこまりました。」


兄貴の後ろで話を聞いてた騎馬は、顔色一つ変えずキッチンに向かった。


「それより、お前はどうなんだよ。」