『なあ…』
いつもより自分の声が響いて聞こえる。
「なんでしょう?」
『…なんでもない』
この空気に耐えられなくて話しかけたけど、その言葉の先に続きは無くて。騎馬が早く戻って来るのだけをただ願った。
─数分後、静かな部屋にノック音が響き、扉が開いた。
「お待たせ致しました。」
『どこいってたんだよ?!』
「お粥を作りに行っていたんですが、予想以上に時間が掛かってしまいまして。」
そう言いながら近付いてくる騎馬の手元には、明らかに葵の時とは違う大きさの鍋が乗ってた。
『なあ…』
「なんでしょう?」
『それ、誰が食べんの?』
答えはわかってだけど、一応聞いてみた。
「陸…」
やっぱり。
「と、葵さんと僕の分です。」
『…はっ!?』
意外な答えに驚く俺は、葵を見た。
─葵も聞いてないとばかりに、身を乗り出して驚いてる。
そんな俺達に気づいてるのか、気づいてないのか騎馬は俺の側でお粥を茶碗に分けていた。
ちゃんと3人分…。
「陸、お先にどうぞ。
熱いので気をつけてくださいね?」


