僕の執事


「陸が悪いんだよ?」


『恭平…』


「そんな顔すんなよ。
俺まで悲しくなる。」


言葉ではそう言ってたけど、顔は笑ってた。


『…キスしたら、気が済むのか?』


「っ!…お前は優し過ぎる。」


最後に見た恭平の目には、涙が滲んでた。
息が掛かりそうな程近い距離にいる恭平の唇が、俺に触れた。
少し冷たいのは涙のせいなのか、違うのかどうでもいい…
軽く触れるだけのキスをすると、恭平は俺から離れた。ただ一言「…ごめん」の言葉が耳に残った。


『…なんでこんな事…』


ゆっくり目をあけ、ベッドに背を向けしゃがみ込む恭平に聞こえるよう呟いた。


「ごめん…」


恭平は泣きながらずっと謝ってた。
その声には、もう冷たさは無くて、後悔と別の感情が入り混じってた。


『…恭平。ごめん、俺お前の気持ちに答えること出来ない…』


「知ってる。俺おかしいよな、陸もそう思ってんだろ?」


『正直、おかしいと思う。だけど、お前の場合は好きになったのが男だったってだけだろ?
好きになる気持ちはみんな同じだし…。でも、俺でよかった。』


「…えっ?」


鼻声の恭平が俺を見た。
目を合わせてはくれなかったけど、目が赤いのだけはわかった。