「全然大丈夫そうに見えないんだけど。」


『昨日よりは下がったって言ってた。』


「高城ちゃんが?」


『うん。』


「…こんな時に聞くことじゃないのは知ってるけど、高城ちゃんとなんかあった?
話しなら聞いてやれるからさ! あ、智章は下で高城ちゃんと一緒だから。
なるべく高城ちゃんを上に来させないように言ってあるけど。」


『…そっか…』


だからさっきから葵の姿が見えなかったのか…。


「うん。」


俺は天井をジッと眺めたまま、『キスしたことある?』そう聞いてみた。


「キス?なんで?」


『いや、なんとなく?』


「…まだ。って言ったら笑うか?」


『笑わねえよ。』


薄ら笑いを浮かべそう返すと、今度は恭平が聞き返してきた。


「お前は?キスしたことある?」


『ん…。』


「…そっか。 で、どんなだった?」


『どんなって?』


「こう幸せだったとか、甘かったとか?」


『なんだそれ…強いて言うなら、悲しかった。かな?』


「…ごめん、それなんて返せばいい?」


『なんも言わなくていい。』


「そう…。」


それから恭平は黙ったままなにも話さなかった。