辛い思いしてたのは葵も同じで、不安でどうしようもなかったのも、きっと同じはずなのに俺…傷つけるような事ばっか、ほんと最悪だな。


「今でもね時々後悔する時があるの。
やっぱり止めとけばよかった、執事学校なんか入らなきゃよかったって。
でも、頑張れたのは陸がいたから。陸が待ってるって思ったから頑張れた。」


『…なあ、一つ聞いていいか?』


俺の喋る隙もないほど、葵はしゃべり続け、まだ何か言いそうなのを遮りそう切り出した。


「ん?」


『葵の願いってなに?』


その言葉を言った時、葵がピクリと反応した。
そして、また少し沈黙が続いた。
俺は俯く葵の横顔をジッと見てた。
今、何考えてる?
なんでそんなに泣きそうな顔…


『葵…──』


気づいたら俺、葵にキスしてた…。


「っ…どうしてこんな事…?」


そっと唇を離した時、葵にそう聞かれ目を伏せた。自分でも、なんでこんな事したのかわかんない。けど…


『今の葵にキスしたかった…執事の葵じゃなくて、今の葵に…。』


それから葵は何も言わなくなった。
微かに聞こえるのは、鼻をすする音だけで…俺なにしてんだろなんて後悔だけが残った。