レモン・マジック




そりゃ、悲しいか。
スポーツ推薦で来たってことは
スポーツが取り柄ってことだもんね。


「まじ毎日暇になる…」
「じゃあ、いいこと教えてあげる」
「え?」
「足壊したときはね、腕を鍛えるの」
「腕?まあなまるの防ぐけど…」
「足治って走ると、すごいよ」
「…何がだよ」
「腕がすごい軽くなるの」
「…ふーん、なるほどね」


さんきゅ、と言うと
またさっきの様な笑顔を
紺野くんは私に見せた。


「っ……」


反則、だよ。
その笑顔見ると、何だか急に
胸が疼きだすんだもん。



「っ、じゃあ私こっちだから」
「おお、今日はありがとな!」


そういうと紺野くんは
私と反対方面のホームに向かって
歩き出した。


なんだ、この胸のモヤモヤ。
まるで恋してるみたいじゃん…。



私は急いで電車にかけこんで
心臓をおさめようとした。

でも私が
この胸の高鳴りの正体に気付くのは
まだまだ先のこと―――………。