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「でねっ、彼の名前は慶次君っていってねっ」
「うんうん」
裏庭で私と明日香はお弁当を食べていた。
朝の事は明日香に一番に話したんだけど、もっと詳しく知りたいって明日香が言ったから。
「慶次君、食べ物が何好きなんだって?」
「ぇ、うんっ、昨日の寝言の通り。焼肉だって」
「んー、そっかそっか」
笑って明日香は野菜サンドをほおばる。
ぱく。
「慶次君、何で眼帯してるのって聞いたらね、春休みに坂道を自転車で下ってたら、目の前に白猫が飛び出してきたんだって。
で、怪我しちゃったっていってた」
「そっかー」
私はたまごサンドを口に運ぶと、苺ミルクも一緒に飲んで流し込んだ。
うーん、微妙な味。
今頃慶次君もお昼ご飯食べてるのかなぁ。
そういえば慶次君、今高校三年生なんだよね…。
中学二年生の私にとっては、4つも年上の大先輩。
いくらなんでも年、離れすぎかなぁ。
もう一口、ぱく。
『キーンコーンカーンコーン、』
鐘が鳴って、肯定に飛び出していく男子が一人、二人。
可哀想かもしれないけど、クラスの男子と慶次君じゃ大違いだな。
慶次君は大人っぽいし、かっこいいし。
越境してまでこの学校に来てよかったって、思う。
明日香に会えた事もあるけど…
一番の理由は、慶次君に会えたから。
私が越境せずに普通に近い中学に通ってたら、慶次君とは会わなかったんだから…。
そう思うと、すごい運命感じちゃうな。



