この世界で一番の奇跡は、


「あー、もうっ。ほら、行こう、優姫」

まだ真っ赤な顔を撫でながら、慶次君はいきなり立ち上がって私の手を掴んだ。

握られた手のひらが、熱い。

「優姫ちっこいからさ、すぐどっかいっちゃいそうじゃん。手ぇ離すなよ?」

「ち…ちっこくないもんっ。背の順まえから4番目だしっ」

「あはは、ちっこーい」

そうやって私をからかう慶次君は、もういつもの慶次君に戻っていた。

どきどきして、きゅんきゅんして。

今日一日慶次君とすごすと思うと、心臓がばくばくいう。

「慶次君、どこつれてってくれるの?」

メールではついてからのお楽しみって書いてあったけど…

「何処行くと思う?」

慶次君は試すように私に逆に質問してきた。

うーん…遊園地、…は王道だよね。水族館も。映画、とか?
お買い物…???

「ここだよ」

そう言って慶次君は、かばんの中から紙を取り出した。
これは、たしか…最近オープンしたばっかりの、遊園地。
この間雑誌で読んだ気がする。カップルのためだけに作られた特殊な遊園地。
入れるのは、もちろんカップルだけ…だったような気がする。

え?あれ?ってことはもしかして、私たち・・・

「カップルのふりして入っちゃお!」

「えぇ!?」

慶次君の大胆な発想には、本当に驚かされることが多いよ…。

「ほら、こうしてれば絶対ばれねぇし?」

そう言って、慶次君は自分の指と私の指を絡めてきた。
これって、よく街中とかでカップルがやってる手の繋ぎ方。
はじめてやったよ…恥ずかしいような、嬉しいような、
くすぐったくて、変な感じ…。