窓の外では野球部がランニングをしている。

遠くのコートでは、テニス部が乱打をしていた。

「優姫?優姫ー。優姫ってば」

「え、え?あっ、ごめん、何?」

突然の友達の声に、一瞬あせった。

「もぅ、また電車のひとのこと考えてたんでしょー」

「そ、そんなんじゃないよ…」

親友の明日香の言葉に、必死に首を横に振った。

「う・そ・だ!顔真っ赤にしちゃって!このぉ!」

「ぅわ、痛い!痛いよ明日香ちゃんっ」

「あはは、真っ赤ー!初心だねぇ!」

「明日香ちゃんったらぁ…もう」

でも、その通り。

毎日通学に使うあの電車。

其処でであった、小さな「しあわせ」。

「あ、もうこんな時間っ。私帰るね」

「はいはい、電車の彼、会えるといいね」

「~~~っっ」

からかいすぎだよ、なんて思いながら、教室を出る。


あの電車に、乗り込むために。