家に帰った後、私はずっとケータイとにらみ合いを続けている。
慶次君に、メールを送ろうと思って必死に考えた文章。
明日香にも手伝ってもらって、結局今日慶次君と電車で別れた後あった出来事…
飛行機雲があったことを写メつきで送る事になったんだ。
何回も何回も自分の打った文を見直していざ送ろう!
そんなところで私は立ち止まっているのでした。
私って本当に勇気がない。
「はぁ…」
『みゃぁ』
ベッドに倒れこんで、ケータイを横に置いたところでペットの白猫、『チル』がじゃれてくる。
「チルぅ…私、どうしよう。こんなはっきりしない性格で恋愛しようとしてるのが間違ってるのかなぁ」
『みゃぁ』
「…チルッ!私を慰めてくれるのはチルと明日香だけだよぉ…っ」
『にゃ゛ぁぁ――――ッ』
ぎゅぅ~~~~っと抱きしめて、ごろんと横になる。
『ピロリン♪』
・・・?
『ピロリン♪』?
え・・・あ、いや。いや、まさか。
そんな。
こんなベタな失敗あるわけ…
ちらりと画面を見る。
送信完了の画像。
「う…そ」
やばいよやばいよッ。
心臓破裂しそうっ!!!
どうしようっ。
でも、もう送ってしまったのはどうしようもない真実で。
「どうしようっ…変なこと書いてなかったかなっ」
いまさら後悔しても、もう遅い。
今頃慶次君のケータイに…あぁぁぁぁ…。
中学2年生の、春。
私は初めて、男の子にメールを送りました。
君に届け…と、書いた文。
君にはもう、届いてしまったのでしょうか・・・?



