「『ねぇ、キスしてよ』」
隣りで慶次君の声がして、私は思わず飛び上がりそうになった。
「い…っ、いつから・・・!?って言うか…えぇっ!!?」
突然の言葉と登場に、心臓のどきどきが止まらない。
「優姫っつってもなっかなか気づいてくれねぇんだもん。寂しかったんだからなぁ」
「ご…、ごめんっ」
集中しちゃうと周りが見えなくなっちゃうのよね…。
昔、母さんに言われた言葉。
最近ではこの癖も治りかけてると思ってたんだけど…。
「あはは、そんなしょぼーんってしなくてもいいの。で、いまのはこの次のページのセリフ。…ほら」
私の隣に座った慶次君は、ペラリと一枚ページをめくる。
「ほら、ここ」
とんとん、とページとたたきながら慶次君は私の顔を覗き込む。
「あ…本当だ。なんだ、びっくりした…」
ほっ、と肩を落とす私を見て、慶次君は不思議そうな顔をする。
「? 何が?」
「何が?…って。だって、慶次君、突然言ってくるから」
しばらく不思議そうな顔をして考え込んでいた慶次君ははっとしたように顔を上げて、
あぁ、なるほど!って顔をして、それから…え?って顔をして、私のほうをちらりと見て…
顔を真っ赤にした。
「や、ちがくって!あの、今のはただ単に台詞をいっただけであって!」
「ふふ、わかってるよ」
慶次君のうろたえっぷりがおもしろくて、つい笑ってしまう。