この頃、駅に向かう足がすごく軽い。

何だか空をとんでるみたいになるの。


彼―… 慶次君に会って、おしゃべりして、仲良くなってから。






『プシュー…』




聞きなれたこの音が鳴って、電車に乗り込む。




行きは私。
帰りは彼。


それがお互いをここで待つ順番。


ルールみたいなもの。


カバンから昨日の慶次君に借りた本を取り出した。



『この世界で一番の奇跡は、』。



慶次君に貸してもらったから…かどうかは分からないけれど、内容がすごく面白くて、読書が苦手な私でもすらすら読めた。


恋愛小説だから・・・かな。




ペラペラ…とめくっていくと、一ヶ所しおりがさしている所がある。

『76』と書かれたそのページは、ちょうど主人公が彼と一緒に海辺を散歩するシーン。

いつか私も、慶次君とどこか遊びにいけたらな…。