恥ずかしくてうつむいちゃった私を見て、慶次君は何かを思い出したように指をパチンと鳴らした。
「んぁ、そーだ。手ぇ出して」
「え?」
「言いから。手、出して」
右手を出すと、慶次君はその手をひっくり返して甲を自分の方に見せた。
そこには、もうほとんど消えかけてるけど、そこには慶次君からのメッセージ、『A・RI・GA・TO』がうっすら残ってる。
「…まだ消えてないんだ」
くすくす笑いながら、慶次君はカバンからマジックペンを取り出して、すらすらと何かを書いていく。
『puri-labi/keiji@ezwb.ne.jp』
「ぷり・・・らび?」
「俺のニックネーム☆」
「可愛いねぇ」
「んー、プリティラビットの略みたい」
「そうなんだ」
たしかに、慶次君は動作とかからしてうさぎっぽい。
あくびするときなんかも、小動物って感じがする。
そんな会話をした後、すぐにアナウンスが流れた。
『次はー、赤月ー、赤月ー』
マジックペンをカバンにしまいながら、慶次君は独り言みたいに言った。
「それさ、俺のメアド。何かあってもなくても今度メールしてほしい…な」
にこっと笑ってカバンを肩に引っ掛け、プシューッ…という音と共に出て行く。
「優姫!」
夕日に染まる君はとってもかっこよくて。
「また明日な!!」
こうやって君に会えたこととか、話せる事が幸せすぎて、今の私にはちょっと怖いくらいだったの。
はじめてこんな気持ちになったし、男の子といっぱい喋るのも苦手だったし…。
でも、それと同時に嬉しさとかもこみ上げてきて。
慶次君とだったら、普通におしゃべりも出来て、安心できて・・・。
もっともっと、慶次君の事知りたいって、
慶次君の傍に居たいって、思ったんだ。
初めての初恋を、追いかけたいって、
思ったんだ。



