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学校が終わって、電車に乗り込む。
思ったとおり、慶次君は座って本を読んでた。
『プシュー…』
聞きなれたこの音がなると同時に、慶次君が顔を上げる。
目が合うと、こっちこっち、って手招きして、ぽんぽんと横の席を手でたたいた。
「え…っと…お邪魔します」
「いらっしゃい」
慶次君が笑って、ゆらゆらと手を振った。
慶次君は笑うと目じりが下がって、子犬みたいですごく可愛い。
「何の本読んでるんですか?」
興味本位で聞いてみると、慶次君は私の顔をじっと見た。
「…?」
「優姫、敬語は駄目!」
「へ?」
「敬語使ったら罰ゲームね」
「えぇっ!!?」
慶次君は私の顔をじっと見て、先生みたいな口調で言う。
「はい。今の台詞敬語無しでもう一度」
慶次君はまた本に目を落とした。
一人残された私は、どうすればいいのか分からなくって困ったように慶次君のほうを見つめた。
けど、慶次君は無視して本を読み進める。
「えぇ~~…」
半ば脱力しながら、しょうがないから再びトライ。
「何の本読んで、るの?」
にこっと笑って軽く本を持ち上げる。
『この世界で一番の奇跡は、』
「おもしろい?」
「ん…」
慶次君はにっこり笑う。
「読んでみる?」
「え?」
「貸してあげるから。ほら」
「え、いいよっ。私読むの遅いし…」
「いいよ、ゆっくりで」
はい、といって慶次君は本を渡してくれた。
心の中では慶次君に本貸してもらったぞぉー!!って、すっごく嬉しくて叫んでたんだ。



