回る世界

「…マジで?」

「大マジ」

「お前あんな可愛い子が傍にいて、よくヤらずに耐えてきたなぁ…」

「カスミがそーゆーのを求めて来なかったからね」



正直なところ、俺だって無性に抱きしめたい衝動に駆られることがあった。

佳澄の柔らかな肌に触れ、ドロドロに溶け合い、一つになりたいと、そう思うことが幾度もあった。

だけどそうしなかったのは、あの居心地の良い空間を壊すのを俺が何より恐れたから。

何をするでもなく、何を求めるでもない、俺と佳澄だけの静かな空間がかけがえのないものだと分かっていたから。



「どうしたもんかなぁ…」



そう呟く俺を武田は困った顔で見ているだけだった。(友達がいのない奴!)





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