回る世界

俯く佳澄の表情をみて、「あぁ、傷つけてしまった」と後悔する。


「この部屋に呼んだのはお前が初めてだよ」

そう言ったらすごく嬉しそうな表情をして俺に抱きついてきた、１年前と今が重なって、酷く息苦しい。

あの娘を呼んだら、あの娘を抱いたら、佳澄が傷つくのはなんとなく分かっていたのに、悲しいかな、これがオスの本能というやつで、綺麗なお姉さんのお誘いを断れなかった。


「ごめん、酔った勢いで…」


バチン！！


俺に最後まで言い訳をさせず、彼女は俺の右頬を叩いた。


涙を目一杯溜めこんで。


「彼女の涙を見たのはいつぶりだろう」と、透明な雫を目の端に捉えながらボンヤリと思った。



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